HQの中では異色と言えるかもしれない奥手なヒロイン。けれど誰しも精神的に追い詰められたらそうなりがちではないでしょうか、過去にヒーローを傷つけまいと引き下がった事件も尾を引いているのかもしれません。 とはいうものの悩みがあっても人に当たり散らすことなく、甘言に惑わされることなく、それでいて不幸な人を見つけたら自分の持っていた財布ごと渡してしまう、そんな純朴としたヒロイン。だからこそ家族や周りの方々に支えられて無事に問題を解決できたのだと思います。 自分に嘘をつかない、事実と真実を見極める、人の意見をうのみにしないというのは簡単なようで難しい、人とのかかわりの中で生きているなら。ですが裏切られたからと言って裏切りを返すのではなく、嘘をつかれたから嘘を返すのではなく信念をもって生きている、そう考えるとヒロインは静かだけれども強く美しい心根を持つ魅力的な女性に見えました。

懐柔するために近づいてきたヒーロー。外見を気にしないヒロインが気になってしまうヒーローという設定はよくあるのですが、自分できちんとけじめをつけるために去っていくヒロインの気持ちを思うと涙なくして読めません。なのにいい意味で読者を裏切っている結末になっているところがやられた！と思いました。今度はうれし泣きの涙、二度泣かされるHQ作品はなかなかありません。

ひと昔ならいざ知らず犬も歩けば棒に当たるというぐらい、街を歩けば異性に当たる現代社会なのにいまだ「あなた以外の人と付き合ったことありません！」という女性がいると思っているところが、女性より男性のほうが純粋と言えるかもしれませんが、自分と同じようにその女性に魅力を感じた男性は他にいるというところまで考えが回らないのかもしれません。また今までの過去があって、現在目の前にいる女性がいるということに早く気付いてほしい。母の形見でもなんの変哲もない真珠のネックレス一つでホテルにもなるお屋敷二個分の価値があるとはびっくり。男は結果を求めるが女はそこに至るまでの経緯を求める。双方にそれが分かり合えることになるまで戦い続けないと幸せが手に入らないのかもしれないと思いました。HQ女子は純粋だなあ、あとあき考えずに行動するのは無謀ともいえるけど行くならとことん行くべきなんですね、途中であきらめない。そういう純粋さが一番大切なのかもしれないと考えさせられます。

家族に恵まれないヒーローとヒロイン。どちらも親族が二人の恋路を阻むが、その数年後また親族によって近づくことになる。誰に阻まれようが二人は結ばれる運命にあったのでしょう。義父は嫌な奴だったけど、あの人がいたからこそ二人は出会えたと思えば、恋のキューピットと言えなくもないかもしれません。 心情の移り変わりが丁寧に書かれているのでヒロインに追体験できます。唯一心残りだったのはウソがばれたときの対処。ヒーローはもう少し糾弾してほしかった、愛する人のために。でも素直な気持ちをとってもわかりやすく一言で伝えられたので、よしとします＾＾。最後までかわいいヒーローとヒロインでした。