ヘタレだけどヒーローの真心に感動。そしてヒロインの勇気に感激した作品でした。

テーマに彩られた舞踏会。想像するだけでワクワクします。自分を「お気に入り」でガードしていたヒロインが、ヒーローに、そして周りの人達に優しさを添えて広げていくところが良かったです。読み返す度に幸せな気持ちになる作品です。

さちみ先生のヒーローは弱気だったりヘタレだったり貧乏だったり、いっそアンチ・ハーレと言いたいくらいなんですが、そこらのオレ様ヒーローよりもずっとずっと男前なんですよね。今回のヒーローもゆるぎなくヘタレ。腕っ節が強くてもヘタレ。ヒロインは鉄壁のしっかり者モードとロマンチックな乙女モードが完全両立。ふたりともステキすぎて悶絶します。あああああ夜空に向かって絶叫したい。大好きだああああ！！！

さすがヘタレかっこいいヒーローを描かせたらさちみ先生の右に出るものはいませんね。今回、後書きを拝読しまして、つくづくと思いました。ヘタレてもいいところ、ヘタレてはいけないところをきちんと見極め、「ヘタレ」と「かっこいい」のバランスをとっているから、さちみ先生のヒーローはこんなに素敵なんですね。そしてそのヒーローの女神たるにふさわしい、可憐で気高くしなやかに強いヒロイン･･･20歳ですか、20歳にしてこれですか。いや末恐ろしい。さらにこれほどのヒーロー/ヒロインを揃えておいて、実はMVPはヘンドリクスという驚きの布陣。贅沢です。本当に贅沢です。まさに愛の勝利と言いたいほどの見事なブレイクスルーで幸福感に酔いしれながら、でも同時に切なさもかみ締める。これはもう恋愛物語の金字塔。名作です。

上っ面の贅沢より、貧しくとも愛情のある生活を。ハーレ以外の世界ではむしろこれが王道ですよね。このすがすがしさがたまりません。大好きです。

一国の歴史が動くダイナミズムと、それをもたらす恋人たちの切ない思いを二つながらに描ききった、神がかっていると言いたいほどの傑作です。壮大で力強く、繊細で美しい。クライマックスの光り輝くような幸福感はちょっと他に類をみないレベルだった。感動的を通り越して神々しい。天にも昇るというのはこういう事かと思うような、なんというか飛翔感がありました。

いいお話でした。お話に作画がぴったり。妹もいつか妬む人生ではなく、自分で切り開くいい人生を送ってほしいです。とても読み応えのある良質な作品でした。

オペラ座のアポロン・・・今まで読んだ中で一番良かったです。何度も何度も読み返し涙がとまりません。ギャグも絶妙です。コミックスで出してもらいたいです。