日本だと「セックス」は性行動の意味ばかりに捕らえられてるしヒーローもその意味で捉えているけれど、実際には性別という意味もあるし、このヒロインが話していることを見ていると性行動を主に扱うカウンセラーというよりは男女間の問題を手広く扱ったカウンセラー。なのでヒロインがセックスカウンセラーと名乗るのもおかしくないと思うけど、そこはやはり日本人の感覚なので馴染みにくいのはあるんじゃないかな。「言葉」を小道具にした話なので2人の掛け合いも考えられていて面白いとは思う。しかし実際にこれほど理論武装ばかりな2人が恋愛というのは見ている側も疲れるし共感もしにくい、2人とも美男美女にも見えないし。しかしセリフでの言葉の使い方は面白かったので、一度原作を読んでみたくなりました。

すれ違いの恋愛話とはいえ、いい大人が被害者面して勝手な妄想ばかりというのも流石にどうなのよ、と言ってしまっては話にならないのかもですが余りに酷いかな、と。それ故に手紙の良さが際立ってるのですが、際立ちすぎて主役を食ってしまっている感が。著者も後書きに原作の感想を書いていたけれど、著者の感想が漫画にてはっきりと表現されているのも原因なんでしょうね。原作を読んで感じたことを、漫画を通じて読み手に伝えることが出来る腕前はとても素晴らしいと思いますが、ヒーローとヒロインの恋愛話を読みたかったのであって、小道具の為のお話が読みたかった訳ではないので評価は低めです。

ヒーローとヒロインの精神年齢が幼いのに対し、背景が大人過ぎて凄いちぐはぐな感じしか残らない。絵が可愛らしい為にちぐはぐ感が更に強調されている。ヒロイン兄があそこまで親友と妹の恋に反対した事について読者を納得させる部分も無いし、ヒーロー姉との誤解も前半はそれなりに書き込んでるのに最後はさらっとしすぎてて何とも納得出来ないし、すっきりしない点が多すぎて話にも登場人物にも良い印象が得られないまま終わりました。所謂作り話とはいえ、子供設定の2人に大人の恋愛は無理があって読んでいても白けます。2人の幼さに合わせた感じの甘い話にするか、2人の精神年齢を引き上げて大人の恋愛話という形にした方が良かったと思います。

でもこれは原作のせいでしょうが、三部作の中では見劣りしているように見えます。 基本的にキンケイド三兄妹より周りのヒロイン・ヒーローの方がしっかりした性格で描かれてますが、この作品は特にヒロインがしっかりしすぎていて、ヒーローが弱い心を持っているというよりも情け無い印象の方が残りやすくて残念。しかしヒーロー・ヒロインの心情はしっかり丁寧に書かれているので、最初から最後までとても惹き込まれ安心して読むことが出来る作品です。 しかしいくらヒーローが足フェチでもあのドレスのデザインは下品過ぎでは。あれじゃ花嫁ではなく踊り子さんですよ。ヒロインの足を魅せたいにしても、もう少し品のあるウェディングドレスがあったと思います。

著者が後書きで「一番惹かれた」とだけあってヒーローはモテ男・ダサ男共に書き込みに力も入っているし、最初から最後まで心情も判りやすく面白味もある非常に良いキャラに仕上がってます。 しかし一方でヒロインの書き込みが最初から最後まで弱すぎる為、要所でもはっきりしないキャラに。最後のヒロインの「ヒーローがどんな人でも好きなんだ」と言う気持ちすら書き込みが弱くて伝わって来ない。 ハーレのコミック版によくある「頁数が少ないのに前半部分を書き込みすぎて後半部分がおざなりになったor展開が急すぎた」という訳でもなく、きつい言い方をすれば「自分の描きたい物だけを詰め込んだ同人誌を読まされた」ような感じに伺えて何とも複雑。 書き込みが強いヒーローより、書き込みが弱いヒロインが主軸寄りになってるのも違和感の原因かと。 設定や前半の2人の掛け合いが面白いだけに何とも消化不良のまま終わってしまって残念です。