裁判官失格
法と正義の間(はざま)で揺れ動く苦悩と葛藤
裁判官だって、嘆き、怒り、想い、涙もする
悲しみ、涙、嘆き、苦悩、葛藤、温もり、想い、怒り、悔しさ……。
法律に基づいて客観的に人を裁く裁判官。よほど「私情」とは縁遠い存在に思える。
しかしそうは言っても、裁判官も人の子。血もあれば涙もあるし、情にほだされてしまうときだってある。
死刑と無期懲役との間で葛藤もするし、モラルのない弁護士がいれば法廷で怒るときもある。殺人犯の更生を願いもするし、逆に涙する被告人に対して非情にふるまう女性裁判官だっている。
もしかすると、裁判官は誰よりも人間味に溢れた存在なのかもしれない。
本書では、30年以上民事・刑事・家事・少年という多種多様な事件を担当してきた元・裁判官が、実際に体験した法廷でのさまざまな“ドラマ”を交えながら、普段はドライにふるまう裁判官の「本音」を明かしていく。
はじめに 人間味に溢れる裁判官たち
第1章 法廷はドラマに溢れている──裁判官の悲しみと涙
死刑にすべき犯人に無期懲役を下すということ
殺人を起こした少年に垣間見た心
平成初の少年死刑囚
いつ死刑判決事件の担当が来るか分からない
ある死刑囚と検察官の深い交流
スナックのママと無理心中した裁判官
裁判中、何を考えているか?
民事事件と刑事事件の審理の違い
裁判官には女性も多い
法廷で突如、怒りだした原告
第2章 裁判官だって、最後まで迷っている──裁判官の苦悩と葛藤
オウム麻原に宗教を勧めた男
世間が納得できない裁判についてどう思うか?
起訴されない以上、踏み込めない
闇に埋もれていく多くの事件
消えた原告──裁判は小説より奇なり
裁判所にロールスロイスで来る原告
「99・9%」の勝算がないと動かない検察
金額が大きすぎて、和解案を持ち出せなかった
裁判官でいることの葛藤
勾留請求された事実が罪とならない場合
「求刑の8割の無難な判決」という誘惑
判決のその瞬間、何を思うか?
法廷以外では何をしているか?
争点整理を長くやり過ぎた事件
書面を読むのに4カ月、判決文を書くのに5カ月
第3章 1人でも受け入れてくれるなら説諭をする、たとえ裏切られても──裁判官の温もりと思い
被告人の更生、説諭への想い
説諭をした少年からの言葉
少年事件に熱心だった先輩裁判官
右陪席でも信念を貫く裁判官
「有罪率99・9%」にも屈しない無罪判決の本音
裁判官人生の失敗
裁判の緊張と緩和
判決の糸口がひらめいたときが一番楽しい
第4章 裁判官の胸の内──裁判官の怒りと悔しさ
被告人が話を聞いてもらえないことがある
前科をどう捉えるか?
モラルに反する弁護士
原告による証拠書類の変造
そもそも裁判所に来る時点で醜い
エリート裁判官、出世の訳
裁判官批判本や報道についてどう思うか?
癒着や忖度はあるのか?
第5章 裁判官こぼれ話
三角関数で事件を証明する検察官
仕送り月35万円でもやめられない 高齢女性のクレプトマニア
裁判官はニュースを見るのか?
司法修習生の生活
裁判官にとっては刑事より民事の方が面白い
刑事より民事の方が将来、役に立つ?
裁判官は恨まれて報復されることはあるのか?
おわりに
など
続きを読む
(C) Ryuichi Takahashi 2019
出版日:2019/12/05